四月・五月・六月

      七月・八月・九月

      十月・十一月・
十二月


   睦月
 着信の絵文字顔文字初笑

 尖塔の影うすうすと寒に入る   

 佳き事のありそな予感初暦

 水餅の揺らぎ壺中の闇にかな

 挨拶の言葉控えめ雪中花

 大家族ごとき気分の笑初

 路地裏を徐行運転初荷来る
                
 待春の尾びれ一閃鯉の音

 洋風の鉄扉ずしりと注連飾

 携帯の胸を震はす初電話
   
 一族の確かな絆笑初

 浜の朝靄より出る鳰の陣

 踏石の形まばらに竜の玉

 遮断機の音に広がる初景色
        

 如月
 佳きことのあるらし気配初音聞く 

 三脚の手筈止めたる初音かな

 飛鳥川女綱男綱の注連飾

 春菊や苦き思いの青春期と

 薄氷の中へ融けゆく朝日かな

 浅き春膝に悲しきほどの坂

 猫柳風に煌めきさざ波す
               
 初音して峡の深きに谺果つ

 二のを足踏みて出かける余寒かな

 水音のうなずくごとく凍ゆるむ

 初音して山路静寂となりにけり

 下萌やいまも見つかる古墳跡

 凍解や遅れて告げる大時計

 枕頭を刻む秒針冴え返る
           

 弥生
 きさらぎの風の起点となる畷

 強東風や客待ち顔の猿回し

 淡雪や少し買ひ足す常備薬

 焼きたてに五指弄ぶ蓬餅

 英字紙に包まれ貰ふ黄水仙

 鯉の尾の放つ一閃水温む

 強東風や期限の過ぎし置き薬
 蓬摘み記憶はるけしわらべ唄

 柔らかき光踏みつつ蓬摘

 暖かや土間に格子の影置きて

 開け放つ門扉の軋み黄水仙

 つちふるや文字の褪せたる時刻表

 野球子の背に蹴り上ぐ春の泥

 散策の順路違へし落椿
     

                                            
ホーム

写真俳句  ミニギャラリ−   俳句手帳   プロフィール  海外旅行
inserted by FC2 system